消波ブロック「テトラポッド」で知られる大手建設会社の不動テトラが、地盤改良と同時に地中に炭素をため込む技術の開発を進めている。地盤改良に使う柱状の構造物の材料にタケなどを用いるもので、来年度にも実用化したい考え。タケは二酸化炭素(CO2)の吸収量が比較的多いのが特徴。全国各地で森林を荒廃させる一因となっている放置竹林問題(竹害)対策にも一役買う技術として注目を集めそうだ。
砂地盤の液状化対策として行う地盤改良は、地上から重機で地中に山砂を注ぎ地盤を固める。注入した山砂を締め固めて柱状にしたものを一定間隔で多数施工する。柱状のものが周囲の地盤を押し固めることで地盤の密度を増加させ、液状化の発生を防ぐ。
同社は山砂に代わって、チップ化したタケとコンクリート廃材を砕いた再生砕石を材料に使って柱状のものをつくる技術の開発を目指している。
タケを採用したのは、全国の里山で放置竹林が生い茂り、周囲の雑木林や広葉樹林を侵食する竹害が課題になっているからだ。
植物は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、光合成で内部に炭素を蓄えながら成長する。中でもタケは短期間で大きく育つのが特徴で、成長期には針葉樹と同等以上の炭素を蓄えるとの研究結果がある。このタケを地盤改良の材料に使用し、地中に多くの炭素をため込むことができるというわけだ。
一般的に山砂を使用した場合に排出される量の5倍以上の炭素を地中に貯留できることから、使えば使うほどCO2を削減できる「ネガティブエミッション技術」と位置づけられている。
技術開発では、福島県で竹害をもたらしていたタケを採取し、茨城県土浦市にある同社の総合技術研究所に運び込み、裁断機を使って細かいチップ状に加工。これを天日干しで乾燥させたものを使用した。このチップと再生砕石でつくった柱状のものを、地下水のある地中に挿入したところ、数カ月を経ても腐朽などの変化はみられないという。
同社は今後、大学との共同研究に着手し、効果の測定やタケの腐朽防止技術などを検証し、来年度以降にも実用化する考え。不動テトラ総合技術研究所の渡辺英次副所長は「竹害に悩まされている地域などに活用を促していきたい。液状化対策とCO2対策だけでなく、竹害対策にも貢献できる」と話す。
建設会社では、鹿島建設と竹中工務店(大阪市中央区)が化学メーカーのデンカと共同で、製造時のCO2排出量よりも吸収量の方が多いコンクリートの実用化を進めている。このコンクリートは、CO2と反応し炭素化することで固まる特殊な材料をセメントの代替材料として使う。
産経新聞