長崎大学のグレゴリー・ナオキ・ニシハラ教授と理研食品(宮城県多賀城市)などの研究グループは、海藻の二酸化炭素(CO2)吸収量を海水中に溶けた酸素の量から試算した。海藻は天然ものや養殖もの、産地や品種、育て方によってCO2吸収量に違いがあった。地球温暖化対策としてCO2排出量を相殺したとする「カーボンオフセット」への利活用などに役立つという。
天然や養殖の海藻やマングローブといった海中・海辺の植物が吸収するCO2は「ブルーカーボン」と呼ばれ、CO2吸収源としてカーボンオフセットへの活用が期待される。これまでは養殖海藻の収穫量などからCO2の吸収量を推定するのみで、実際のCO2吸収量は計測できていなかったという。
研究グループは全国6カ所の藻場で海水中の酸素濃度の変動量から光合成の量を調べた。CO2は海水中で水に溶けて炭酸イオンになるなど測定が難しいが、酸素は比較的容易だという。海藻を挟むように設置した測定機器で10分おきに酸素濃度などを測定。呼吸と光合成の量を概算し、光合成量の方が多くCO2を吸収し体内に貯蔵できた日数を求めた。
CO2を固定できた日数の割合は天然の藻場の方が養殖よりも高かった。例えば、長崎県大村湾などの天然の藻場で60%程度だった。宮城県松島湾のワカメ養殖場では50%強を維持したものの、岩手県広田湾のワカメ養殖場では約34%、沖縄県のモズク養殖場では約27%と低い割合となった。ニシハラ教授は「何でも海藻を育てれば効果的という訳ではなく、場所や品種などを考える必要がある」と話す。
今後は全国の様々な藻場で同様の調査をする。天然の藻場は複雑な生態系の中で形成されているため、養殖よりもCO2吸収量が高い傾向があるとみられる。温暖化による海水温の上昇などの影響で、天然の藻場の面積は全国で減少傾向にあるという。
日本経済新聞