電気自動車で遅れていた日本が一気に巻き返す可能性(日産と三菱の軽EV)

軽EVで価格破壊を起こした日産&三菱

日産の軽EV「サクラ」は3週間で受注が1万台を超えたことでも話題になった

軽乗用電気自動車(EV)の日産サクラと三菱eKクロスEVが発売されたことで、日本は世界的にも小型EVの先端をゆくようになった。
欧州車では、フィアット500eや、プジョーe208といった、小型で身近なEVも出はじめた。だが、日本市場に導入されるそれらは、新車価格が400万円以上する。それに対し、日産サクラと三菱eKクロスEVは、約240~295万円という価格帯で、輸入車の半値に近い。ある意味で、EVの価格破壊的な衝撃をもたらしている。
 クルマ大国といえる欧米は、日本に比べ大都市部においても公共交通機関が必ずしも十分に整備されておらず、クルマでの移動が必要だ。日本も、地方都市や郊外では、欧米と同様の状況だ。そうしたなか、欧米では高性能な上級EVが選択肢を増やしているが、庶民が日々の足に使うようなEVはまだ限定的で、なおかつ高価だ。いかに性能を満たしながら、販売価格を下げられるかがこれからの課題となっている。
 そうしたなか、日産サクラと三菱eKクロスEVの果たした役割は大きい。

安くて性能もいいEVの登場が期待される
 ここまでの低価格帯を実現できた背景にあるのが、世界のどの自動車メーカーより早くEVを十数年前に市販した先駆者であることだ。両軽乗用EVで使われているバッテリーは、日産リーフで使われているものそのままで、容量を半分にしただけだ。駆動用のモーターは、ノートe-Powerの4輪駆動の後輪用を流用している。そのうえで、十数年にわたりi-MiEVを生産してきた三菱の水島工場の生産工程に、わずかな投資の追加で新型を製造できる点も低価格化に効いている。
 このようなEVやハイブリッド技術の積み重ねを経て、共通部品を使えたり、生産設備を流用できたりするからこそ、低価格を実現できているのである。
 日産や三菱に遅れて近年EVを扱いはじめたメーカーは、まだ部品の量産数が限られ、原価低減に間に合わない。製造設備もまだ新しい。原価低減の手立てが不足している。
 では、共通部品を使う小型EVの性能が低いかというとそうではない。日産サクラと三菱eKクロスEVのモーター出力は、軽自動車のガソリンターボと同じ数値で、最大トルクは約2倍だ。車両重量が重くなる分、重厚な走行感覚になり、なおかつ静粛性は高い。クルマの商品性として、エンジン車とは格段の差がある。
 ホンダeは、450万円以上するが、ドアミラーの代わりにカメラを使ったり、ダッシュボード前面に液晶画面を設定したり、EVであるだけでなく、先進技術への挑戦が加味されている。エンジン車では前輪駆動(FWD)を主力とするホンダだが、ホンダeでは後輪駆動を選んだことで、小まわりがきき日常での運転しやすさを高めている。そうした経験を基にした、次のEVに期待がある。まずは、軽商用EVが国内に向けた次の目標となるが、原価への挑戦と商品性の確保が鍵を握るだろう。

自動車大国日本というだけあって、EVもHonda eをはじめとした個性豊かなモデルが多く揃っている。トヨタやスバルからもbZ4Xやソルテラが出たばかり。革命は既に始まっているのかもしれない

 いずれにしても、世界的に小型EVの充実が今後の課題だ。エンジン車と変わらず、市場を左右する車種だからだ。そのうえで、小型で廉価だから、性能や質には我慢するといったこれまでの価値観が、EVでは転換していくだろう。安くても、いいものを手に入れられる時代が来るのだ。EVで注目すべきは、小型車の価格と商品性向上への両立と、そのための提案力になっていくはずだ。従来の上下関係ではなく、大小を問わない良品の勝負になっていく。

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