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新たな炭素供給源「ブルーカーボン」
地球温暖化が原因の「磯焼け」で危機
「ブルーカーボン」とは、09年に国連環境計画(UNEP)の報告書において発表された、ワカメやコンブといった海藻などの海洋生物によって吸収・貯留されている炭素のことを指す。炭素を吸収した海洋生物はCO2を海底に固定させる働きをするため、新たな炭素吸収源として期待されている。
森林や山林などが吸収・貯留した炭素「グリーンカーボン」と比較すると、年間で吸収できるブルーカーボンによる吸収量は約29億トン、一方でグリーンカーボンによる吸収量は19億トンと、より規模が大きい。
しかし、そのブルーカーボンを支える海藻類が今、危機を迎えている。地球温暖化を原因とする「磯焼け」が日本全国で深刻化しているのだ。
「磯焼け」は「海の砂漠化」とも呼ばれ、地球温暖化によって海水温が上昇した結果、ウニなどの海藻を食べる生物が活発化して増殖し、海藻類を食べ尽くしてしまって石灰質の生物が磯の海底にはびこる現象のことである。
磯焼け」は1990年代にはその存在が認められていたが、海水温の上昇などに伴い今や日本全国各地で見られるようになった。水産庁が磯焼け対策全国協議会*1を設置するなど、国も対策に本腰だ。都道府県レベルでも対策が進められており、自治体だけでなく企業も連携して解決に向け動き出しているとのこと。
海の砂漠化」を食い止めるため
海洋環境再生モデルの確立へ
磯焼け対策の取り組みの一つとして、福岡県での事例を紹介しよう。地元の糸島漁業協同組合と人気飲食チェーンとの共創だ。
通常、だしをとった後のコンブは廃棄対象となる。その廃棄部位を、地場の海に生息するウニ(ムラサキウニ等)に与える。
もともと地場の海にすむ天然のウニは食用部分が充実しておらず売り物にはならなかった。そればかりか、藻場を荒らし磯焼けを起こす「食害」の厄介者と嫌われてきた。
ところがコンブの廃棄部位を餌として与えたところ、ウニはそれらを食べ、天然の海藻類には手を出さなくなったという。そのため藻場が荒らされなくなって原状回復が進み、さらには廃棄部位を食べたウニは食用として十分に生育して、食用部分の味も他と遜色ないという。
当然、市場で売り物になれば漁協関係者も潤うことになる。まだ試行段階ではあるが海洋環境の再生モデルとして、関係者はその構築に手応えを感じている。
同様の取り組みは、北九州市でも進められている。
福岡県は各自治体の中でも有数の
「ブルーカーボン先進県」
磯焼け対策から「ブルーカーボン先進県」へ――。福岡県は各自治体の中でも有数の「ブルーカーボン先進県」といえる。
福岡市は18年に「博多湾NEXT会議」を設置し、博多湾におけるアマモ場(藻場の一種)の育成に取り組んでいる。「博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」も実施し、23年には全国に先駆けてブルーカーボンを販売した実績も話題となった。
「ブルーカーボン・オフセット制度」は、いわゆるCO2排出権取引*2と同様で、港湾での藻場が吸収し固定したCO2量をクレジット化し、「ブルーカーボン・クレジット」として企業や個人に販売するものだ。
県内有数の漁港を持ち、観光地でもある糸島市でも「ブルーカーボン」の取り組みが進んでいる。同市は60km以上続く海岸線を有し、豊富な海洋資源の恩恵を受けているとともに、環境保全にも力を入れているとのこと。
ダイヤモンドオンライン記事より抜粋