【SCN投稿記事のスタンス】←タッチしてご確認ください。
ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMU)の研究チームが、極めて高い光触媒効果を持つ、金と白金のナノ粒子から構成される二次元バイメタル超結晶を作成し、太陽光を利用してギ酸を分解し、グリーンな水素を効率良く製造する手法を開発した。水素発生速度は触媒1gあたり毎時139mmolであり、太陽光による水素製造の世界記録に相当するものだ。広大な面積を要する太陽光パネルや発電設備を必要とせず、脱炭素化に向けて水素エネルギーの活用を促進するものと期待されている。
金や銀のナノ粒子における自由電子の集団的な振動は、特定波長の光と共鳴する局在表面プラズモン共鳴現象を示すことが知られ、光機能材料やデバイスへの応用を目指すプラズモニクスと呼ばれる研究が活発化している。プラズモンを光触媒効果に利用する研究も進められ、H2SをH2とSに直接分離する技術などが提案されて、脱炭素化に向けた水素製造への活用が注目されている。
従来、水素は主として天然ガスなどの化石燃料から製造されているが、これをサステナブルな製造手法に転換するため、水素を効率良く貯蔵し輸送できる水素キャリアとして、比較的製造が容易であり、分解反応によってH2を発生するギ酸(HCO2H)が注目されるようになっている。LMUの研究チームは、フリッツ・ハーバー研究所やベルリン自由大学、ハンブルグ大学の研究者と連携しながら、プラズモンを利用した光触媒効果によって、ギ酸から水素を生成する高効率なプロセスの開発にチャレンジした。
まず研究チームは、プラズモン共鳴現象を示す100~200nmの金ナノ粒子が規則的に配置された二次元超結晶を作成した。そしてこの超結晶が、太陽光や可視光と強い共鳴現象を起こして高エネルギー電子を生成し、入射光エネルギーの吸収が極めて大きくなることを確認した。「金ナノ粒子の配列が入射光を極めて効率的に集光し、非常に局在化した強い電場が存在する、いわゆるホットスポットが生成される」と、研究チームは説明する。その上で、古典的だが強力な触媒材料である白金のナノ粒子を、金ナノ粒子間のホットスポットに配置することで、ギ酸の化学的分解反応に対する触媒効果を高めようとした。その結果、分解反応が促進され、極めて高い水素製造速度、触媒1gあたり毎時139mmolを得ることに成功した。
「開発手法は、広大な面積を要する太陽光パネルや発電設備を必要とせず、脱炭素化に向けて水素エネルギーの活用を促進する。プラズモン共鳴による光触媒効果は、太陽光を活用する新しい手法であり、CO2を有用な物質に転換するなど、他の反応にも可能性が拡がる」と、研究チームは期待する。既に、材料開発成果について特許化を推進しているとのこと。
fobcrossエンジニア記事から抜粋