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アルカリ水電解(AWE)やプロトン交換膜(PEM)に比べて、開発メーカーが極端に少なかったのがアニオン交換膜(AEM)形水電解装置である。ただし、技術的にはAWEとPEMのいいとこ取りとも言われ、優れた点が多い。特に、触媒に高価なレアメタルが不要で、コストをPEMに比べて大幅に下げられる可能性がある。
課題は耐久性の確保で、セルスタックはまだPEMの数分の1程度の時間しか使えないもようだ。この点についてこれまで唯一、製品化していたドイツEnapterの戦略は、電気自動車(EV)を刷新した米Tesla(テスラ)のそれに似ている。つまり、非常に小さなモジュールを多数使い、制御していく。
具体的には、MW級の大型装置でも、出力が0.5Nm3/時と手で持てるほど超小型のセルスタックを多数使う設計にした。こうすると、セルスタックが1つ壊れても制御で全体には影響が出ないようにでき、交換も容易になる。AEMの特長として、カソード側に漏れてくる水がPEMに比べて大幅に少ない点を挙げる。PEMでは水が漏れるのを防ぐ仕組みがないのに対し、AEMでは隔膜を透過してきた水がカソードで即座に分解されるからのようだ。
AEM形水電解の特長の1つは、水がカソード側に漏れにくい点。PEMでは水はプロトンの単なる運び役で、カソードから多くが漏れ出てしまう。一方、AEMでは、カソードに到達した水は即座に還元され、水素の形で発生すると同時に、OH-はアノードに向かう。結果、漏れてくる水は少ない。これで、水の大型タンクや大型の乾燥器(ドライヤー)が不要になり、システム全体のコストやランニングコストが低減する。
AEM向け隔膜またはMEAでは、実はトクヤマやドイツFumatechが以前から製品を出荷している。最近はこれに、米Dioxide MaterialsやドイツEvonik Industriesも参戦。さらに、パナソニックも、NiFe-LDHをアノードに用いたMEAで参戦する。近い将来、競争が急速に激しくなりそうだとのこと。
日経XTEC記事から抜粋