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日本ガイシは「CEATEC 2023」の出展で、大気中の二酸化炭素を吸着/回収するセラミック基材や、二酸化炭素の再利用を可能にするサブナノセラミック膜を展示した。主に、自動車の排ガス中の二酸化炭素を吸着/回収する用途での使用を想定している。
DACシステムは、DAC用ハニセラムを複数組み合わせたコンタクター(角型ハニカム集合体)を複数組み合わせたものだ。DAC用ハニセラムは、無数の穴が開いた角型基材で、穴の表面にはCO2吸収剤が塗布されている。これにより、DAC用ハニセラムの穴を通過した大気中の二酸化炭素を吸着/回収できる。吸着した二酸化炭素は、加熱することでDAC用ハニセラムから回収可能だ。回収した二酸化炭素は、一酸化炭素に分離した後、メタンやメタノールに加工して使用できる。
会場では、1平方インチ当たり600個の穴が開いているDAC用ハニセラムが展示された。担当者は、研究開発における課題について「穴のサイズや個数は、ある程度自由に設定できる。穴を小さくして体積当たりの比表面積が大きくなれば、大気中の二酸化炭素に触れる機会も多くなる。一方で、体積当たりの比表面積が大きくなれば、空気抵抗が強くなるため、圧力損失(穴を通過させるために必要な力)が増加してしまう。体積当たりの比表面積と、空気抵抗のバランスが難しい」と語った。
緻密な膜層で、気体を分子レベルで分離
同社は、気体を分子レベルで分離する「サブナノセラミック膜」を展示した。サブナノセラミック膜は、内部に直径1nm以下の穴が複数開いたセラミックフィルターだ。穴の表面にはセラミック製の緻密な膜層が形成されていて、気体がフィルターを通ると、二酸化炭素のみがフィルターの側面から排出され、それ以外の物質はそのまま穴の端から排出される。
用途は、油層から原油を回収する際に使われる「CO2-EOR」(二酸化炭素原油増進回収法)などを想定している。CO2-EORは、二酸化炭素を油層に圧入することで、油層内の原油の流動性を高め、原油の回収量を向上させる技術だ。圧入した二酸化炭素は、約半分は地下に残留/貯蔵されるが、残りはメタンなどの混合ガスと共に地上に戻ってくる。地上に戻ってきた混合ガスに対してサブナノセラミック膜を使用することで、二酸化炭素の再利用が可能になる。
会場では、直径2mmの穴が1600個開いた、直径が18cm、長さ1mのサブナノセラミック膜が展示された。担当者は、今後について「現状のサブナノセラミック膜は、CO2-EORなどの高圧環境下での利用を想定して開発している。今後は、低圧環境下でも使用できるような技術の実現を目指す」と語った。同社は2019年2月、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)および日揮グローバルと共同で、米国 テキサス州での実証実験を開始している。
EE Times JAPAN記事より抜粋
まだまだ基礎実験段階のようですが、もしガソリン自動車や発電機に取り付けるだけでCO2が完全回収できるようになれば、現状のカーボンニュートラル活動に大きな転換点が生じます。
CO2を絶対に出さない仕組みはどんなに科学が発展しても無理ですし、動植物自体、生きていればCO2を排出してしまいます。合理的に低コストでCO2を回収する技術が確立されれば、異なった未来が見えてきます。皆さんはどうお感じになられましたか?SCN:伊東