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-ギ酸から2,000時間以上の“連続”水素製造運転を実証-
ポイント
- フロー式によって“連続”してギ酸から水素に高効率で変換する技術を開発
- ギ酸から得られた水素を使って安定した発電を実証
- 得られる水素は、発電以外のさまざまな用途に展開可能
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)触媒化学融合研究センター 官能基変換チーム 川波 肇 上級主任研究員は、筑波大学大学院 数理物質科学研究群化学学位プログラムの澤原 馨登(博士後期課程)と共同で、フロー式によるギ酸からの発電システムを開発しました。
将来のエネルギー問題を改善するために、水素供給源の一つとしてギ酸が期待されています。ギ酸はバイオマスや二酸化炭素などからも得られ、主に家畜飼料の添加剤などに使われる化合物です。ギ酸から水素を製造する技術を社会実装するためには多くの課題があり、国内でも実証例がごくわずかです。本技術では、ギ酸から水素をつくる触媒を見直し、ポリエチレンイミンをイリジウム錯体触媒と未配位のビピリジンで架橋した固定化触媒を設計・合成し、フロー式による“連続”水素製造プロセスを開発しました。得られた水素を用いて、燃料電池による発電試験を行い、安定した電力が得られることを実証しました。
これらの成果は、ギ酸を水素キャリアとするエネルギー技術を社会実装するための技術として期待されると同時に、ギ酸から得られる水素を発電以外の用途へ展開することも期待されます。
開発の社会的背景
近年、エネルギー問題と地球温暖化問題を解決するために、水素社会の実現が注目される中、効率的な水素の貯蔵・運搬・製造を担う水素キャリアの技術開発が進んでいます。産総研ではギ酸を水素キャリアとして利用するための研究を重ねています。ギ酸は酪農での飼料の添加剤などに使われるなど、取り扱いも比較的容易な薬品です。ギ酸は海外で工業的にメタノールなどから製造されていますが、最近は二酸化炭素や、バイオマス、メタンなどからの合成法も開発されつつあり、二酸化炭素の排出削減に貢献できる水素源です。しかしギ酸を水素キャリアとして社会実装するには、プロセス上の多くの課題がありました。
研究の経緯
産総研は、ギ酸を水素キャリアとする高効率な水素製造システムの開発を目指しており、高活性なギ酸脱水素化用触媒(2012年3月19日 産総研プレス発表)や、ギ酸から生成する高圧ガス(水素と二酸化炭素の混合ガス)を簡便に分離し、高圧水素と液化二酸化炭素を同時に製造する技術(2015年12月11日 産総研プレス発表)を開発してきました。さらに高活性・長寿命な触媒開発に向けて、新しい分光分析技術を開発し(2022年9月16日 産総研プレス発表)、ギ酸から高圧の水素を発生するときの触媒反応メカニズムや劣化メカニズムを解明。
今回の技術開発では、社会実装に向けた “連続”した水素製造プロセスを実現するために、課題の多いバッチ式からフロー式へのプロセス転換とそのプロセスによるギ酸からの水素製造、さらにその水素を使った燃料電池による発電試験が行われました。
産総研ニュースリリースから抜粋
上記技術「ギ酸から高効率で水素を製造」に大きな可能性を感じます。「ギ酸」と言えば、トヨタ中央研究所が10.5%を実現した人工光合成で生成される物質です。
トヨタ中央研究所の人工光合成サイト
つまり太陽光のエネルギーから人工光合成でギ酸を生成し、そのギ酸から水素というゼロカーボンのエネルギーを得られる。この仕組みが完成し、コストが採算に合うようになれば、化石燃料から解放されるばかりかカーボンニュートラルを実現できる魔法のような夢の研究なのです。ぜひ成功して日本だけでなく人類の未来に光をもたらして欲しいと願います。皆さんはどうお感じになられましたか?SCN:伊東