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バイデン米政権は13日、全米7カ所を水素の生産拠点として選定したと発表した。70億ドル(約1兆円)を助成し、温暖化ガスを排出しない次世代エネルギーとして期待される水素の活用を後押しする。経済の脱炭素化を促して「水素大国」を目指す。三菱重工業のプロジェクトも選定され、日本への輸出を視野に入れる。
水素は燃焼しても温暖化ガスを出さない。長距離トラックや工場の熱源といった電化が難しい分野での活用が期待されている。
バイデン大統領は13日、北東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで「米国で製造業を振興する計画の一環だ」と演説した。2024年に大統領選挙を控え、クリーンエネルギー政策の成果と雇用創出をアピールする狙いもある。選挙の「激戦州」にある水素計画も支援対象に含めた。
選定されたのはカリフォルニア州やテキサス州、ペンシルベニア州など16州にまたがる7カ所の「水素ハブ」。1カ所あたり10億ドル前後の公的資金が投じられる。ホワイトハウスによると、民間資金も含めると官民で合計500億ドル近くが投資される。
1カ所のハブには複数の生産プロジェクトがあり、日米欧などの少なくとも数十社が計画を進めている。
①天然ガスから水素を取り出し、工程で発生する二酸化炭素(CO2)を回収する「ブルー水素」、②太陽光・風力発電で製造する「グリーン水素」、③原子力で製造する「ピンク水素」――の3種類の計画がある。20年代後半から生産が順次始まるとみられる。
米エクソンモービルなど石油会社や電力会社、液化天然ガス(LNG)会社など幅広い業種の企業の計画が選定された。三菱重工は2カ所の「水素ハブ」で事業を計画しており、製造設備の納入も視野に入れる。
IT(情報技術)大手のマイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルといった水素の需要家も製造事業に参画する方針とのこと。
米国政府は30年に年1000万トン、50年に年5000万トンの水素製造を目指す。50年の目標を達成すれば21年の世界の水素需要のおよそ半分に匹敵する規模となるようだ。
米国では水素を運搬しやすいアンモニアに変換して、日本と欧州に輸出する計画も相次ぐ。大規模な公的支援を受け、脱炭素エネルギーの生産・輸出国としても米国の存在感が増しそうとのこと。
日経新聞から抜粋