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パナソニックHDが開発の全固体電池の特徴
・3分で充放電ができ、出力電流が大きい
・容量(エネルギー密度)の不足も急速充電でカバー
・2020年代後半に実用化のめど
パナソニックホールディングス(パナソニックHD)は2023年9月、開発中の全固体電池を報道陣に初公開した。充電時間は、充電率10%から同80%にするまで3分。加えて、充放電サイクル寿命は、「(常温の場合)1万~10万回のどこか」(同社)と長い。技術的には2020年代後半には実用化可能になる見込みだが、具体的な用途や量産時期は検討中だとする。短時間で充電できることを生かした様々な用途を想定するが、今のところ、最も有望なのは、航続時間が短くてもかまわない用途におけるドローンのようだ。
既存の電池の20倍以上の速度で充電
パナソニックHDによればこの全固体電池は、「高入出力型」。つまり、エネルギー密度の高さより充放電の速さを優先させたタイプだという。3分の超急速充電は、Cレート†では約15Cともいえる。
†Cレート=電池を充電または放電する際の電流の大きさを、電池の電流容量に依存しない形で示す指標。1時間で電池を充電率0%から100%(満充電)にする計算上の定電流値を1Cとする。このため、10Cは60分÷10=6分で満充電。100Cは36秒で満充電にする電流値になる。ただし、実際には電池を一定の電流値で満充電にすることはできない。
スマートフォン用を含む既存の民生用リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)では多くが急速充電といっても1/2~1C、つまり充電に1~2時間はかかる。
電池において、充放電性能の高さと充放電サイクル寿命の長さは一般に正の相関があるが、この電池でもそれは当てはまる。特に液体電解質のLIBだと極端に短いサイクルしか回らないセ氏60度といった高温でも、この電池であれば高い容量維持率を保てるという。
全固体電池であることで、液漏れなどの心配もなく、安全性や信頼性の点でも既存のLIBより高いとする。
調査用ドローンの使い方に合致
パナソニックHDによれば、電池が高入出力型であることが、鉄塔などの状態を調査するドローンの使い方にうまく適合するという。
まず第1に、ドローンが浮上するにはかなり大きな出力が必要になる。浮上中も、姿勢制御のために瞬間的には100~150Cという大電流が必要になるが、それにも対応しているという。
こうしたドローンの調査は1回当たりほんの数分。調査後、いったん着陸させてデータをチェックし、再び飛ばすという作業を繰り返す。ところが、既存の蓄電池はすぐに電池切れになってしまい、しかも再充電に時間がかかるため、あらかじめ満充電にした電池を20個以上も携帯して、頻繁に交換するという使い方が多い。
一方、今回の高入出力型全固体電池であれば、数分飛ばして電池容量がほぼ空になっても、機体を下ろしてしてデータをチェックしている数分の間に充電して再度飛ばすことができる。重い電池を多数携帯する必要がなくなるわけだ。
現時点でパナソニックHDは、アイ・ロボティクスの小型ドローンを用いてこの全固体電池の実験を進めているが、他のドローンメーカーとの共同開発も積極的に進めたいとしているとのこと。
日経XTECH記事より抜粋