空港施設は6月1日、水素で動くフォークリフトの試乗会を羽田空港で開催した。日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)のグランドハンドリング(グラハン、地上支援)やフォワーダー(利用運送事業者)のほか、国土交通省東京航空局の藤田礼子局長、羽田空港の地元・大田区の担当者らが参加し、環境性能を官民にアピールした。
羽田空港東貨物地区で開催した試乗会には、豊田自動織機(6201)が製造する、水素を動力とする燃料電池フォークリフト「FUEL CELL FORKLIFT」を出展。水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作り、走行用のモーターを動かす仕組みで、水素を3分間充てんすることで8時間稼働する。従来の鉛電池を動力とする電動車は、8時間動かすのに通常の充電で8時間、急速充電でも90分かかる。
従来の化石燃料などを使用して製造する水素「グレー水素」を使用した場合、二酸化炭素(CO2)の排出量はガソリン車と比べ52%、電動車と比べると16%低減できる。太陽光などの再生可能エネルギーを使用して製造する水素「グリーン水素」を使用する場合、CO2排出量は「限りなくゼロ」(空港施設)に近づくという。
空港施設では水素フォークリフトに、グリーン水素の導入を検討する。
◆従来機と差なし
試乗会を主催した空港施設の乘田俊明社長は、導入に向け検討すべき点は多いとした上で「行政や事業者の方々の協力が不可欠。CO2削減に取り組んでいきたい」とあいさつした。
現在、グラハンやフォワーダー各社が使用しているフォークリフトは、ガソリン車や軽油を動力とするディーゼル車のほか電動車が中心で、水素フォークリフトは導入していない。ガソリン車やディーゼル車の場合、排ガスのにおいが食品などの荷物に移ることなどを一例に挙げた乘田社長は、クリーンな水素フォークリフトの導入を各社に働きかけたいとした。
今回のプロジェクトを進める空港施設施設部施設課の阪上津行課長は、「(CO2排出量を実質ゼロにする)『カーボンニュートラル』の実現に向けた、エコにつながるプロジェクトとして立ち上げた」と説明。各社が水素フォークリフトを数十台単位で導入する場合、空港内に水素ステーションを整備するとした。
試乗会を視察した東京航空局の藤田局長は「使い勝手が良さそう。3分の充てんで8時間動くのは魅力的」と述べ、環境性能の高い水素フォークリフトを導入することで「羽田空港をCO2削減のショールームにしたい」との意向を示した。
試乗会には、JALとANAのグラハンスタッフらが参加。10人以上が試乗し、走行性能や荷の上げ下げなど、使い心地を試した。試乗した人によると、「非常に乗りやすい。アクセルを踏んだ感覚やリフトアップの感触がよかった」ようで、ディーゼルや電動など従来機と差がなく運転できると話した。
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