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天然ガス、メタンなどを原料とし、反応による二酸化炭素(CO2)を排出しないターコイズ水素が注目されている。あいち産業科学技術総合センター産業技術センターは、メタン直接分解反応装置の開発に取り組み、1カ月以上の長期安定した水素製造が可能なことを確認。さらに、副生される炭素の用途開発も検討する。中小規模の水素需要に適しており、実用化になればCO2削減に大きな効果を発揮しそうだ。
天然ガス、メタンなど化石燃料を用いた水素製造技術として、これまでに水蒸気改質・シフト化反応によるオンサイト型水素ステーションが実用化されている。ただし、同反応はCO2を排出し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)とするためにはCO2回収装置が必要だ。
今注目される技術は、メタン直接分解は反応によるCO2が発生せず固体の炭素が生成される。CO2回収装置が不要となり、比較的少ないコストで利用が見込める。都市ガス供給網を活用できるほか、メタン水素混燃なら既存の設備を使えるとのこと。
センターで開発したメタン直接分解反応装置は、メタンガスを送り込む反応炉内に複数の金属触媒板を配置。温度600―900度Cに設定した反応炉にメタンガスを投入すると、金属触媒板の表面で分解し、水素と固体の炭素(生成炭素)が得られる。水素を未反応のメタンとともに排出する構造とし、連続運転を可能にした。副生された生成炭素は反応炉下部に堆積し、取り出せる。
ニッケルを触媒とした熱分解の手法を採用しており、触媒性能の長時間持続を確認済み。同反応装置の開発は伊原工業(愛知県豊川市)などと共同で取り組み、毎時1ノルマル立方メートルの水素製造能力を持つ装置を試作。ターコイズ水素の実験製造、生成炭素の物性評価などを行っている。
CO2を排出しないことを最大のメリットとするターコイズ水素だが、メタンから得られる水素の量が少ないという課題がある。同センターによると、22・4リットルのメタンガスを供給して100%反応した場合で水素が約4グラム、生成炭素が約12グラムという。この課題を補う方策として提案しているのが固体炭素の用途開発だ。
メタン直接分解で得られた生成炭素は、径300ナノ―500ナノメートル(ナノは10億分の1)の繊維状で導電性が高い特性を持つという。熱伝導性材料への応用を検討する一環で、樹脂フィラーとしての活用を探ったところ、既存の炭素製品と同等の性能を確認できた。引き続き、ゴム補強材、吸着剤、電池材料などに応用を見込む。
ターコイズ水素製造の技術開発は海外でも加速。米国、豪州などでは大型プラントによる実証が行われている。ただ、生成炭素の利用についての関心はあまり高くないという。生成炭素の利用で、日本は優位性を発揮でき、世界的な競争力となる可能性があるとのこと。
ニュースイッチより抜粋