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海藻などが光合成で温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収することに着目し、港湾に藻場を形成する「ブルーインフラ」の取り組みが全国で本格化している。政府は地球温暖化対策として2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げており、効果が注目される。
山形県酒田市の酒田港の一角に今年5月、発電所から出た石炭灰を固めたブロック片計40トンが沈められた。ブロック片には海藻のアカモクが植え付けられている。
国土交通省主導のブルーインフラの実証実験で、船だまりのうち幅約150メートル、奥行き約50メートルの区画を民間の5事業者に無償で貸し出し、藻場を形成してもらう。
09年に国連環境計画(UNEP)が沿岸湿地の生態系で取り込まれるCO2を「ブルーカーボン」と命名し、温室効果ガスの吸収源となると提示して以来、国内でも対策が模索されてきた。
環境省によると、日本の藻場は約20万ヘクタール、干潟が約5万ヘクタールで、日本の森林面積の約100分の1。国立研究開発法人「港湾空港技術研究所」の桑江 朝比呂 ・沿岸環境研究グループ長によると、日本のCO2吸収量のうち、ブルーカーボンは最大で全体の約6%だ。今後、人工林の老化で吸収量が急激に減退するため、ブルーカーボンの吸収量の割合が相対的に上がり、30年には最大約12%になる。
国交省港湾環境政策室が全国974か所の港湾を対象に、防波堤や干潟などの海藻によるCO2吸収量を試算したところ、年間10万トンほどだった。さらに藻場の適地を整備すれば年間5・9万トンCO2吸収量を増やせるという。
横浜港(横浜市)や神戸港(神戸市)で藻場や干潟が完成するなど、各地でブルーインフラの整備が進められている。実証実験に関わっている宮城大の北辻政文教授(建設材料学)は「生態系の保全も期待できる。民間も参加するのは画期的で、全国の港湾に広がれば」とのこと。
読売新聞オンラインから抜粋