「CO2直接回収」新材料で高効率に(東京都立大:山脇教授)

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概要
 現在、気候変動問題を解決するため、二酸化炭素の回収、利用技術の確立が急務となっています。しかし、既存の大気中の低濃度二酸化炭素(400ppm)を回収する技術(Direct air capture, DAC)では効率・コストの面で改善の余地があり、新しいDAC技術の開発が望まれています。
 東京都立大学大学院理学研究科の山添誠司教授、藤木裕宇(大学院生)、天本和志(大学院生)、吉川聡一助教、京都大学触媒・電池元素戦略拠点の平山純特定助教、東京都立大学大学院都市環境科学研究科の三浦大樹准教授、加藤玄(大学院生)、宍戸哲也教授らは、相分離を利用することで二酸化炭素吸収速度の向上と反応系からの生成物の分離を実現し、ガス流通下でも400ppmの二酸化炭素を99%以上の効率で除去する新しいDACシステムの開発に成功しました。

研究では、シクロヘキシルアミン基をもつジアミン化合物の一種であるイソホロンジアミンが二酸化炭素と反応すると、不安定なカルバミン酸が固体として得られることを利用して、大気中の低濃度二酸化炭素を高速で吸収できるDAC技術の開発に成功しました(図1)。固体のカルバミン酸が懸濁した水溶液を60℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を全て放出・回収できること(図1)、イソホロンジアミン水溶液は繰り返し利用可能であること、他のアミンでも本システムを適用可能であること、既存技術と比べ二酸化炭素吸収速度が2倍以上速いことから、今回、発見した相分離を利用した二酸化炭素吸収・回収システムは新しいDACシステムとして実用化が期待されます。


DACとは

大気中のCO2回収・利用

大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収して利用する技術「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」が注目されています。CO2を材料として活用できることが大きなメリットがあります。再生可能エネルギーなどを組み合わせることで、CO2を有効利用する循環システム構築が期待できます。

【商用化成功】

CO2を資源として捉え、CO2を分離・回収することで大気中への排出を抑える「カーボンリサイクル」の考え方が浸透し始めました。DACは、大気中のCO2を直接回収できる技術として、カーボンリサイクル実現に貢献すると期待されています。

従来、CO2の排出量と吸収量を相殺することで過去に排出され大気中にたまったCO2を回収し、地中に貯留する「ネガティブエミッション」を実現する技術として研究されてきました。

DACは、吸収液や吸着材に空気中のCO2を吸収・吸着させ、その後加熱や減圧などの操作で吸収液や吸着材からCO2を分離・回収する方法が代表的です。他に膜分離や冷やしてドライアイスとして回収する方法もあります。DACはここ数年で注目され、スイスのベンチャーであるクライムワークスが商用化に成功しています。

そうした中、2020年開始の政府主導で革新的な研究開発を呼び起こす支援プログラム「ムーンショット型研究開発制度」の目標の一つとして、「50年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」が掲げられた。その中のテーマとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとしてDACの研究が進んでいます。例えば、全遺伝情報(ゲノム)を自在に変えられる技術「ゲノム編集」で反応性を高めた微生物やコンクリートの廃材、液化天然ガス(LNG)の未利用冷熱などを利用し、大気中のCO2を吸着・回収する技術を開発するなど野心的なものです。

【課題はコスト】
今や全地球的な課題となった温暖化防止。その元凶の一つであるCO2を化学品や燃料などに有効利用するDACの実現には、技術やコスト面でまだまだ課題が多い。特に課題はコスト。これが解決しないと普及しません。循環型社会を推進するためにも、官民で知恵を出し合う必要があります。

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