膨大なCO2排出源であるコンクリートへのカーボンニュートラル化の取り組み

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コンクリートの開発を進めている=英インペリアル・カレッジ・ロンドン

この世界はコンクリートでできている。耐久性があり、安価で、ビルにも橋にもトンネルにもよく使われている建設資材だ。だが至る所にあるがゆえに、環境に与える影響もばかにならない。

コンクリートは砂や砂利などの骨材を水と混ぜて製造し、セメントで接合される。コンクリートのカーボンフットプリント(製造から廃棄までの過程で出る二酸化炭素の量)で、最も大きいがこのセメントだ。

とくによく使われているのがポルトランドセメントで、石灰を窯で焼成して製造する。英シンクタンクの王立国際問題研究所(チャタムハウス)によると、2021年のセメント製造量は40億トンを超え、製造過程で排出された二酸化炭素は全世界の排出量の8%を占めた。建設業の脱炭素化が叫ばれる中、世界各地で環境に優しいコンクリートの製造方法の研究が行われている。

「コンクリートは素材として素晴らしく、頼もしい存在なので、あらゆる場所で取り除くのは困難だ。可能であれば木造建築への移行もありうるが、コンクリートは多くのインフラで必要とされている。そしてコンクリートの製造には、ある種のセメントが必要なのです。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究員はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)なコンクリートを可能にするセメント製造法を考案した。

考案された方法は、カンラン石という豊富に存在する鉱物を、マグネシウムとシリカに分解するところから始まる。生成されたシリカは、コンクリートで使われるポルトランドセメントの35~45%を直接置き換えることが可能だ。マグネシウムのほうは二酸化炭素と結合して炭酸マグネシウムに変化した後、建設資材として焼成粘土レンガや石膏(せっこう)ボードの代替品などに使われる。
製造過程で発生した二酸化炭素は、大気中に排出する代わりにセメント工場の煙突から回収できるため、この方法で製造されたコンクリートはカーボンニュートラルになる。また炭酸マグネシウムは安定した炭素貯留先になる。
炭素隔離の観点から言えば、建設業の利点のひとつは巨大でかさがあることだ。おかげで大量の二酸化炭素を貯留できる。

建物は長持ちするものが多いので、長期的にしっかり炭素を隔離できる。排出された二酸化炭素を燃料などに再利用するのも良く、循環利用になるが、燃料を燃やしたとたんにCO2が排出される。建造環境なら二酸化炭素を長期間封じ込めることができるとのこと。

他にもいくつかの企業でコンクリートに二酸化炭素を直接貯留する方法を模索されている。ある取り組みは、回収した二酸化炭素を混合中のコンクリートに注入し、セメントと化学反応させてより強度の高いコンクリートを製造している。二酸化炭素の隔離だけでなく、強度を高めることで、より少ないセメントでコンクリートを製造できるそうだ。またカナダの取り組みは、工業プラントで回収した二酸化炭素を鉄鋼製造で廃棄された鉄くずと結合させることで、セメントを100%代替できるという。

塩水からセメントを作る

アラブ首長国連邦(UAE)では、コンクリートのカーボンフットプリントを削減しつつ、別の環境問題の対策にもなるような方法が研究されている。

UAEでは海水を脱塩化することで飲料水の大半を賄っているが、副産物として塩水――鹹水(かんすい)とも呼ばれる――が生成される。ポンプで海に戻しているため海の塩分濃度が上がり、海洋生物にとっては有害になりかねない。

土木と都市工学を専門とするニューヨーク大学アブダビ校のケマル・セリク助教は、高濃度マグネシウムをはじめとする有益な鉱物が鹹水に含まれていることを発見した。

「具体的には、脱塩工場から廃棄された鹹水を使って、ごく簡単な化学反応を起こしている」。セリク氏のチームは鹹水を固体と液体に分離した後、マグネシウム成分からセメントを製造する方法を開発した。

「マグネシウム由来のセメントは新しいものではない。だが炭酸マグネシウムの調達源といえば、鉱山業が一般的だ」とセリク氏は説明する。従来のマグネシウム由来のセメントは加熱作業が必要なため、二酸化炭素が発生する。だが鹹水からセメントを製造すればコストパフォーマンスもよく、環境にも優しいとのこと。

研究はまだ概念実証段階で、1日に4000~5000リットルの鹹水で扱っているという。だがセリク氏は製造規模を拡大して、建設業での実用を可能にしたいとのこと。

CNNニュースから抜粋

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