三菱重工、国内外と提携しCO2の回収・利用・貯留に挑戦

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CO2回収プラントのイメージ 、伊国エンジニアリング大手と協業

三菱重工業がエナジートランジション(移行)に関する事業の主要手段に位置付ける二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)の具体化に向け、国内外で提携を拡大している。実績がある回収の強化と並行し、カギとなる大量輸送、貯留の実現を狙うとのこと。

化学プラントや発電所の脱炭素化の手段として、排出されるCO2の回収が注目されている。三菱重工はこの分野のトップランナーだ。対象に付設する回収プラントや装置を手がけ、商用での排ガスからのCO2回収量の世界シェアは70%を超えるとのこと。

4月にはイタリアのエンジニアリング大手サイペムと、自社の回収技術のライセンス供与で協業した。サイペムは石油・ガスプラントを手がけ、欧州・中東に強い。同社が三菱重工の技術を活用し、同地域で回収プラントを拡販する。三菱重工は他社へのライセンス供与も目指すとのこと。

回収したCO2は産業利用するか、地下に貯留して脱炭素につながる。貯留場所には船舶で輸送するのが有力だ。子会社の三菱造船(横浜市西区)はCO2を液化して搭載する小型の実証船を開発中で、2023年度後半に完成予定だ。事業化に必要な大型船の共同開発について、日本シップヤード(NSY、東京都千代田区)と検討を進めているとのこと。

NSYは造船最大手の今治造船(愛媛県今治市)と大手のジャパンマリンユナイテッド(横浜市西区)の商船営業・設計の統合会社だ。海運会社から受注後、今治造船の造船所でタンク容積数万立方メートルの大型船を建造するとみられており、27年以降の竣工を目指す。三菱重工の下関造船所(山口県下関市)では建造能力が限られるため、今治造船系のNSYと組むとのこと。

貯留では22年11月に米石油大手エクソンモービルと提携した。同社はCO2の輸送・貯留で知見がある。三菱重工の加口仁副社長は「回収だけでなく埋める先が重要で、オイルメジャーは適地を持っている」と狙いを説く。具体的な協業に向け、定期的に議論している。米国やアジアなどで大規模な貯留案件を両社で実現できれば、CCUSを事業化できるとのこと。

CCUSは別の視点でも強みになる。主力製品の火力発電用ガスタービンでは、CCUSが米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの競合に対する優位性になる。競合と異なり、発電とCO2回収を1社でできるため、火力発電の脱炭素手段として提案しやすい。外部連携でCCUSが前進すれば、こちらにも恩恵が見込めるとのこと。

日刊工業新聞記事から抜粋

 

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