セメントではなく微生物で固める新たな建築資材「バイオコンクリート」で脱炭素

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コンクリートは、世界で最も広く使われる建築資材だ。それはセメントに骨材、水を混ぜて固めたものだが、セメントの製造過程で大量の二酸化炭素(CO2)が発生する。英誌「エコノミスト」によると、その排出量は全人類が生成するCO2の約8%にもなり、温暖化が進むいま、コンクリート由来のCO2削減が求められている。

セメントは石灰岩を焼成し、主成分である炭酸カルシウムを分解することで作られるが、その際に副産物としてCO2が生じる。そのため、セメントを使わずにコンクリートを作る新たな手法が欧米を中心に生み出されている。

そこで注目されているのが、微生物だ。その使い方はさまざまだが、微生物を活用して固めたものは「バイオコンクリート」と呼ばれる。
光合成をする微生物を活用

米コロラド州のプロメテウス・マテリアルズ社は、クロロフィル(葉緑素)を持ち、光合成をするシアノバクテリアを用いてコンクリートを製造する独自のプロセスを開発した。

同社は、光を使って培養したバクテリアに、独自の刺激剤を投与することで、炭酸カルシウムの結晶を生成させる。その塊を骨材や砂、ハイドロゲルと合わせ、ブロックの形に圧縮して硬化させるとコンクリートブロックができるのだ。

この方法でコンクリートを作ると、CO2排出量は従来の手法に比べて10分の1になる。また、ブロックの硬化にかかる日数も短縮できる。さらに、これまでのテストによると、この低炭素コンクリートは充分な強度を持つことがわかっている。

同社は、穴のあいたブリーズブロックや防音壁用のレンガの販売から始める。大型の建設や橋梁用のコンクリートはより厳格な認証が求められるため、今後時間をかけて開発していくという。

自ら固まるコンクリート

米ノースカロライナ州のバイオメイソン社は、スポロサルシナ・パステウリイという微生物を使ってコンクリートを作る。米メディア「ブルームバーグ・グリーン」によると、このバクテリアは一定の環境下でCO2を取り込み、炭酸カルシウムに変換するという。この化学反応プロセスは水中で炭酸カルシウム骨格を生成するサンゴ礁の仕組みと同様だ。同社はこの自然の働きを活用し、従来のセメントのように強固で凝集性が高いコンクリートを作る。

また、同社はデンマークのコンクリート製造大手IBF社と提携し、デンマークでもバイオコンクリートの生産を始めている。デンマークでは新規建築物に対する環境規制が強化されており、低炭素の建築資材に対する潜在的なニーズが大きい。大規模な新築建築物の年間炭素排出量は、建設段階も含めて低く保つことが義務付けられ、その規定値は今後数年間で定期的に引き下げられる。

米国でも、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州をはじめ、多くの地域で「低炭素」コンクリートを優遇する規制整備が進む。今後各地でニーズは高まっていくだろう。なお、バイオメイソンが目指すのは、2030年までに世界のセメント生産におけるCO2排出量の4分の1を削減することだ。世界のコンクリートの使用量は多いので、それだけ減らせばインパクトは非常に大きくなるとのこと。

自ら亀裂を埋める新素材

オランダのバジリスク社もバクテリアを用い、コンクリートのひび割れを修復できる独自の製品を作る。その商品の一つ、バジリスク・ヒーリング・エージェントは、さまざまなバクテリアの乾燥胞子とポリ乳酸などの栄養素を含むペレットで、建設業者によって通常のセメントに混ぜて使われる。

ペレットの混ぜられたコンクリートに経年劣化で亀裂が生じて水が入ると、内部の胞子が活性化し、炭酸カルシウムが生成される。すると、最大1ミリメートルの小さなひび割れが自然と埋まるとのこと。

従来のコンクリートは時間の経過とともに亀裂が入り、強度が低下することを想定して鉄筋を埋め込む。しかし、このペレットを使えばひびが大きくならないので、使用する鉄筋の量を半分程度に減らせ、その製造に伴う大量のCO2排出をなくせる。つまり、メンテナンス費用だけでなく、積算のCO2排出量も大幅に抑えられるとのこと。

Yahoo!ニュースから抜粋

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