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ドイツ政府が、ガス、灯油の暖房システムの使用を禁止し、ヒートポンプ式の暖房に置き換える法案を打ち出しています。ヒートポンプは日本の冷暖房では既におなじみの技術ですが「ドイツ国民にとっては負担が大きい」と国民は反発しているとのこと。
社民党、緑の党、自民党からなるドイツ政府は、将来の暖房システムに関する大変な法案を作成した。「建造物エネルギー法(GEG= Gebäudeenergiegesetzes )」で、巷では「暖房法案」と呼ばれている。
法案の中身を簡単に言えば、従来、多くの家庭で使われてきたガス、および灯油の暖房システムが段階的に禁止され、近い将来、政府が推奨しているヒートポンプ式の暖房に置き換えることが義務付けられる(水素暖房も認められるが、これはまだ絵に描いた餅)。ヒートポンプというのは、電力を使って大気中の熱を集めて移動させる技術で、熱を作るのではなく移動させるだけなので電力消費が少なく、日本の新しいエアコンでは冷暖房ともに、すでにこの技術が使われている。ただ、欧米の家庭では元々冷房はなく、暖房にヒートポンプ技術が使われることもほぼ皆無だった。
ドイツは寒い国なので、ほとんどの家庭はセントラル・ヒーティング方式で家全体を暖める。集合住宅の場合は、全戸の暖房が一括で賄われ、たいてい地下に暖房の機械室がある。もちろん、各戸の暖房の強弱や入切は自由に行え、それによって個々の料金の計算がなされるという合理的な仕組みだ。
ところが政府の考えでは、2024年1月以降、新築住宅ではガスと灯油の暖房が原則禁止され、ヒートポンプが標準仕様となる。つまり、それを法律で固めようというのが今回の暖房法案である。ただ、ヒートポンプは値が張るので、これにより、マイホームを計画している人たちの予算に大きく狂いの生じることは間違いない。24年といえば、わずか半年後の話だから、国民の戸惑いは大きい。
ヒートポンプ設置には、いくつか例外も定められている。たとえば遠隔暖房のネットワークに接続できるならヒートポンプを設置しなくてもいいし、また、使用する燃料の少なくとも65%が再エネ由来なら、ガスや灯油の暖房を引き続き使うことが許される。
遠隔暖房というのは、自治体や公社が大規模に熱湯、もしくは高温の蒸気を作り、それをパイプで周辺地域に供給し、各家庭の給湯と暖房に利用するシステムだ。これは19世紀終わり頃より、ソ連や北欧など寒冷地域、またドイツでは、冷戦時代にソ連のガスが供給されていた関係で、特に旧東独地域で普及している。地域の所々に、その高温の水や蒸気を60〜70度の温水に変える熱交換所があり、そこからさらに各建物に温水が送られ、それを家庭で温水供給と暖房に使う。環境に対する収支では大変効率が良いと言われる。
ただ、パイプによる高温の水、もしくは蒸気の輸送なので20km以上離れると機能しにくくなるため、都市部など家が比較的密集している地域に限られる。要するに今回の法案では、都市部でこの遠隔暖房に接続できれば、新築であってもヒートポンプ設置の義務からは免れるということになる。
現在のドイツでは、全国4100万世帯のうち、ガス暖房が50%、灯油暖房が25%、遠隔暖房が14%で、ヒートポンプは3%にも満たない。そして、たとえヒートポンプに変えようと思っても、前述の通り、器具の代金に加え、床を剥がすなど面倒な工事や莫大な工費が掛かる。しかも、その工費は、古い家ほど割高になるため、収入の低い人たちに重い負担がかかることが必至。経済・気候保護省のハーベック氏は、潤沢な補助金をつけるというが、その財源は明らかではない。
ヒートポンプ式の冷暖房のエネルギー源は電力だが、ドイツは原発を止めて、風力と太陽光発電の再生エネルギーで賄おうとしているが、ウクライナ戦争の余波で天然ガス不足から石炭発電を増やさざるを得ないぐらいだから、何かチグハグで大きな違和感を感じる。緑の党の最終目標は、実はCO2削減とは関係なく、電気もガスも原子力もない「新しい世界」なのかもしれません。。。
産経新聞とMAGNEWSから抜粋
ヒートポンプ式の冷暖房が普及していないヨーロッパでは最近、日本のダイキンや三菱電機などのエアコンが引っ張りだこなのだそうです。この法案は日本の一部の産業界にとってはビジネスチャンスなのかもしれませんが、ドイツを含めたヨーロッパはどこに向かおうとしているのか?不安でしかたありません。
SCN:伊東