EUの次期自動車環境規制「Euro 7(ユーロ7)」、内燃エンジン乗用車の新車販売を2035年以降実質的に禁止する法案の理事会採決がドイツやイタリアの反対で採決が延期された(時期未定)とのこと。その中で話題になっている「eフューエル」合成燃料とは何なのかを調べてみた。
「eフューエル」合成燃料とは水素と炭素を化学反応させてつくる燃料のこと。メタノールやガソリン、軽油をつくることができる。製法は古くから存在するが、現代では材料の炭素を大気中のCO2から得ることで地球温暖化防止につながる燃料として注目されている。合成燃料のうちeフューエルと呼ばれるものは、水素もCO2を出さない製法でつくるというものを指す。
eフューエルは欧米では盛んに研究されており、日本でも2050年のCO2実質排出ゼロを目指す 「グリーン成長戦略」(経済産業省発表) に、50年までに「ガソリン価格以下のコストを実現する」ことが明記された。主に大型車での利用が想定されるが、既存の内燃機関や燃料供給インフラを活用できるため、普及可能なコストを実現できれば、乗用車での利用も十分想定される。
EVにすれば温暖化問題は解消するという単純な議論への反発もある。CO2の排出は製造から廃棄までのライフサイクル全体で見るべきという考え方がすでに欧州では主流になり始めている。EV、FCVは走行段階でのCO2排出はゼロだが、現状ではどの国でも発電や水素製造の段階でCO2を排出している。
eフューエルや水素にも課題はある。 経済産業省の合成燃料研究会 の試算によると、eフューエルは現状の試算で1㍑当たり700円というコストがかかり、今のところ商業化できる水準にはない。要因はCO2を出さない製法で作られるCO2フリー水素の価格だ。合成燃料研究会では水素のコストダウンがeフューエルを商業化する上での鍵になるとしている。
水素にはコストに加え、その特性上の課題もある。常温で気体かつ最も軽い気体であるため、運搬・充填が難しく、エネルギー密度も低い。水素を利用するなら、むしろ燃料電池に分があるとも言われている。
EV化に舵を切ることにより、欧州では主要な自動車メーカーがエンジン部品工場などでのリストラを 相次いで実施されている。ゼロエミッションを急激に進められれば、日本でもサプライヤーを含め雇用問題の発生は避けられない。
「eフューエル」や水素には課題が多いことは十分承知されている。それでもこれらの技術に可能性があるとアピールしているのは、雇用維持なしのカーボンニュートラルはあり得ないという日本の製造業のが要求がドイツやイラリア等の自動車生産国からも噴出してきた結果のユーロ7規制への採択先延ばしとなったのだろう。今後の動向に注目したい。
産経新聞ニュースやNEDO資料等を参考
SCN:伊東