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ロシアのウクライナ侵攻で燃料費が高騰し、世界を直撃している。そんな中、仙台市若林区にある東日本大震災の集団移転跡地で、ビニールに囲まれた実験用の農業ハウスが静かに動き出した。中には水耕のイチゴが植えられている。太陽光で熱源を取るこのハウスでは、燃料がまったく使われていない。東北大などの研究グループが開発した世界初の「栽培用自然エネルギー利用熱源システム」で室内が温められている。実用化に向け走り出したばかりだが、将来は「燃料ゼロ、CO2排出ゼロ」が実現可能なのだという。
栽培用自然エネルギー利用熱源システムは、太陽熱集熱パネルで集めた熱を蓄熱槽にため、夜間でもその熱を利用して室内を暖める仕組みだ。
イチゴの栽培は昼間は25度以下、夜間は8度以上の気温が必要とされる。太陽が出ている昼間はほとんど問題ないが、夜間の熱の確保が難しかった。結局、燃料を使わざるをえない状況が続いていた。
東北大多元物質科学研究所の研究によると、これまでも潜熱蓄熱槽はあった。しかし、熱をためる潜熱蓄熱材(酢酸ナトリウム・三水塩)が、熱を取り込む熱交換器の周りに凝固層を作って固まり、熱の取り込みが1%ほどしかできなかった。潜熱蓄熱材は、液状の携帯カイロと同じような成分だ。
熱交換機を回転させることで凝固層ができにくくなることに着目。また、回転の速さを変えることで取り込む熱量を調整できることも分かった。回転させることで、以前の80~100倍の熱量が取り込めるようになったという。この研究は実験室レベルではすでに成功しており、日米の特許も取っている。
太陽熱集熱パネルと、太陽熱を恒温熱源化することができる凝固層剥ぎ取り型の潜熱蓄熱システムは、化石燃料に依存しないカーボンニュートラル型の施設園芸ができる世界初の試みだという。
産経新聞ニュースから抜粋