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福島県相馬市は二酸化炭素(CO2)と再生可能エネルギー由来の水素を使って製造した合成メタン燃料「グリーンメタン」を使った社会実験に乗り出す。IHI(本社・東京)と市が連携して運営する施設で燃料を生産し、この燃料を使ったバスを2月から市内で走らせる。IHIによると、グリーンメタンを燃料として供給し、車両を走らせるのは国内初。両者は実験成果を脱炭素に向けた今後の取り組みに生かす。IHIは相馬市を拠点の一つにし、エネルギーを地産地消する循環型社会について研究を進める方針だ。
メタンは天然ガスの主成分だが、メタンを合成メタンに置き換えても既存のガス機器やインフラ設備などが活用できる。このためコストを抑えながら脱炭素化を推進できるとされる。
グリーンメタンはIHIと市が運営する「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」内にある水素研究棟「そうまラボ」で生産する。センター内の太陽光発電で生み出した電力で水素を作り、CO2を反応させて製造する仕組みだ。
走らせるバスは市内の高齢者が無料で利用できる「おでかけミニバス」。現在運行している6台のうち1台をメタンガスで走る仕様に切り替え、燃料にグリーンメタンを使用する。バスの導入費用は約410万円。市の担当者は「先端研究を生かした社会実験ができる。データを積み上げ、今後の政策に生かしたい」と話す。
IHIの広報担当者は「エネルギーを地産地消する循環型社会のさまざまな技術モデルについて、相馬市を拠点の一つにして研究を進めたい」としている。
市とIHIは2018(平成30)年4月、市内にグリーンエネルギーセンターを開設した。電気分解による水素生成でできる酸素も活用。敷地内の水槽に酸素を送り、ニジマスなどの淡水魚を試験的に陸上養殖している。水槽の水を肥料として植物の水耕栽培にも活用している。将来的にはCO2を大気中から直接回収する技術の研究も進んでいる。
温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現には、化石燃料の代替エネルギーの製造、流通、使用に伴うコストや効率化が課題となっている。CO2と再生可能エネルギー由来の水素で合成メタンをつくるカーボンリサイクルは「メタネーション」と呼ばれ、環境負荷が低く、次世代のガス脱炭素技術として注目されている。
福島民報から抜粋