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カーボンニュートラルの取り組みのひとつとして注目されているのが、未利用熱の活用だ。
明るくしたり、動かしたり、温めたりする力であるエネルギーは、熱エネルギーや光エネルギー、電気エネルギー、運動エネルギーなどに変換されて、人々の日常生活を支えている。
私たちが使うエネルギーは、エネルギー資源である石油、天然ガス、太陽光などの1次エネルギーから、使いやすい形に変換された2次エネルギーで、発電、精製、乾留などさまざまな加工を行なうことで変換されている。
未利用熱は有効活用できる可能性があるにも関わらず、捨てられてしまうエネルギーのことで、国内で消費される1次エネルギーの約6割が未利用熱のまま捨てられていると言われている。利用されないまま廃熱として放出されてしまう未利用熱を、2次エネルギーに変換される過程で、有効的に再利用・変換利用することで、産業や運輸など様々な分野においてさらなる省エネ化を目指すことが可能となる。
このような実情から、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は利用されることなく環境中に排出されている膨大な量の未利用熱に着目し、「削減(Reduce)・回収(Recycle)・利用(Reuse)」を可能とするための革新的な要素技術の開発と、システムの確立を目指した「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」を2015年度から実施している。
NEDOプロジェクトで、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)に参画していた日立ジョンソンコントロールズ空調は「一重効用ダブルリフト吸収冷凍機」を開発。今までは捨てられていた低温度域の廃熱も回収し、従来機比で約2倍の廃熱エネルギーを活用できる仕組みをコンパクトなボディーで実現、2017年に吸収冷凍機「DXSシリーズ」として製品化した。海外の複数の国で採用されるなど、カーボンニュートラル時代を見据えた低温未利用熱の活用手段として期待されている。
吸収式冷凍機とは
「冷蔵庫、エアコン、ビルなどの大型空調機器、スーパーマーケットのフリーザーなどが身近な冷凍機ですが、吸収冷凍機もその一種です。産業用途で使われ、地域冷暖房と呼ばれるエネルギーセンターや、食品関連などの工場、大型ビル、ショッピングモール、テーマパークなどで使われています。
冷凍機の大半は電気で動く機械で、これに対し吸収冷凍機は熱で動きます。熱は通常、熱いところから冷たいところに移動します。夏場のルームエアコンのように、室内の25℃の空気を吸い込んで35℃の外気に吐き出すことは、逆のことを行っているため、何かしらの力を途中で与えないといけなくなります。その力が電力であることが多いのですが、吸収冷凍機は中から熱を吸い取って熱の力で外に出す仕組みです。
吸収式冷凍機は、フロンガスなどを用いずに主に水を冷媒として冷水を作り出し、それを冷房などに利用する装置です。『蒸発』、『吸収』、『再生』、『凝縮』、再び『蒸発』というサイクルを繰り返して冷水を作ります。
私たちはエネルギーを、熱や光などのさまざまな力に変換して利用しており、エネルギーが変換される過程で利用されないまま廃熱として放出されてしまう未利用熱を回収して、有効的に再利用するのが吸収冷凍機で、再生器の熱源として、温水の形で廃熱が利用できます。通常は電気で冷やしている部分を、吸収冷凍機を使うことで未使用熱に置き換えることができるため、電力式の冷凍機に比べ、消費電力が10分の1程度、大規模な吸収冷凍機だと20分の1、50分の1に抑えられます」
従来の吸収式冷凍機と「DXS」が異なる点
「従来の吸収式冷凍機では、約90℃程度の排熱(入口)を約70 ℃(出口)までにして使うことしかできず、未利用熱の活用にロスが生まれていましたが、DXSは95℃の入口温度を出口温度約55℃まで低減して使えるようになりました。
90℃から70℃で20℃分のエネルギーを使っていたものが、95℃から55℃になると40℃分になり、20℃から40℃に上がるので使えるエネルギーが増え、出てくる冷却の力も比例して増えていきます。従来の約2倍の温度差で熱回収が可能になり、熱量回収に要する温水流量の低減も可能になったことで、従来機に比べ温水搬送動力を約45%削減できます。
経済産業省 資源エネルギー庁によると、「コージェネレーション(熱電併給)」とは、天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジン、タービン、燃料電池などの方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステム。回収した廃熱は、蒸気や温水として、工場の熱源、冷暖房・給湯などに利用でき、熱と電気を無駄なく利用できれば、燃料が本来持っているエネルギーの約75~80%と、高い総合エネルギー効率が実現可能となる。
熱を有効利用することができるコージェネレーションの導入は、企業としても省エネやCO2の削減、経済的にも大きな効果が期待されている。欧州では温水などの熱エネルギーの共有ネットワークや、コージェネレーションが発達しており、日本でもカーボンニュートラルの取り組みのひとつとして、未利用熱の需要が今後拡大すると予測される。
@DIME