福島、大柿農業ダム水力発電

福島県浪江町の農業用ダム「大柿ダム」を活用した水力発電事業(地産地消、年間1700世帯)が始動した。エネルギーの地産地消などに取り組むJFEエンジニアリング(東京)と水力発電所運転事業大手の東京発電(同)、ダム管理を県から受託する請戸川土地改良区(浪江町)が4月、新設する発電所の運営会社を設立。2024年1月の発電開始を目指している。

 大柿ダムは1988年に完成した。受益面積約3500ヘクタールで、土地改良区を構成する南相馬市小高区や浪江町、双葉町の農家に農業用水を送っている。水路の維持管理費は各農家が負担してきたが、原発事故で離農者が増加。土地改良区の組合員は約4000人いるものの、将来にわたって持続可能な管理を模索する中で、農業用水を活用した水力発電事業に乗り出すことを決めた。

 大柿ダムから農業用水を送り込む放流管を途中で分岐させ、新設する「請戸川水力発電所」で発電させる。その後、減勢槽に農業用水を戻す仕組み。年間発電量は、一般家庭の約1700世帯分に相当する約600万キロ・ワット時を想定する。着工時期は未定という。

 運営会社「アクアコネクトなみえ」は資本金1000万円で、JFEエンジニアリングが51%、東京発電が44%、請戸川土地改良区が5%を出資。電気は固定価格買い取り制度(FIT)に基づき、電気事業者に売電される。

 県は原発事故を教訓に再生可能エネルギーの導入拡大を進めており、運営会社は水力発電事業を通じて営農支援のほか、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現に貢献したいとしている。

 JFEエンジニアリングの担当者は「既設の設備を生かし、これまで使われていなかったエネルギーを発電に利用できる。請戸川地区の復興に少しでも貢献できるように取り組んでいきたい」と話す。

 土地改良区の江畑立行事務局長(64)は「ダムや水路を維持管理していく上で非常に重要な事業」と期待されている。

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