関西電力は29日、宮城県川崎町の蔵王山麓に計画する陸上風力発電事業を、白紙撤回すると発表した。5月30日の計画公表後、地元では蔵王連峰の景観への影響や騒音の問題などで強い反発が生じ、村井嘉浩宮城県知事や川崎町を含む周辺自治体の首長からも反対意見が上がっていた。関電は地元の反発の強さから、事業継続は困難と判断した。
関電の多田隆司執行役常務再生エネルギー事業本部長ら幹部が29日午後、川崎、蔵王両町と山形市を訪れ、各首長に撤回を伝えた。
多田常務は、川崎町の小山修作町長に「地元の信頼や理解が得られず、多大なご心配を与えた」と陳謝。「景観や環境への影響、土砂災害の危険性などの観点から総合的に判断した」と撤回理由を説明した。
小山町長は「妥当な判断だ。関電の進め方には誠意を感じられなかった。町内外に広がった反対運動を通し、人々の蔵王への思いの強さを改めて実感した」と述べ、今後は再生可能エネルギー事業者に対する町条例の整備を進める意向を示した。
関電はこれまで、環境影響評価(アセスメント)に基づいた「計画段階環境配慮書」を経済産業省や宮城、山形の両県に提出。計画公表後に、想定区域が国の天然記念物で絶滅危惧種のイヌワシの行動圏に含まれることが判明していた。
関電は、北海道の4地域で計画していた事業のうち、伊達市などの1地域の事業も断念した。
[関西電力による蔵王山麓の風力発電事業] 当初は川崎町前川地区の1600ヘクタールに高さ最大約180メートル、直径約160メートルの風車23基を建設する計画だった。最大出力9万6600キロワット。2028年度着工、31年度の運転開始を目指すとした。予定地の一部に蔵王国定公園が含まれたため、県環境影響評価技術審査会が計画を疑問視。関電は6月20日の住民説明会で予定地から蔵王国定公園を外し、風車を19基に減らす方針を示した。
河北新報