二酸化炭素吸収の多いケナフ栽培について
最近このケナフが注目されているのは、地球環境への関心の高まりの中で木材繊維に代わる新しい非木材資源として期待が寄せられているからです。
ケナフは、炭酸ガスを多量に吸収するため、炭酸ガス濃度の高まりによる地球温暖化防止にもつながるのではという期待があるからです。
ケナフの特徴は、栽培範囲が広く短期間で多くの収穫が可能なことです。靱皮繊維を衣料に、木質部を燃料に、種子からは油をと、生活の中で生かされてきたケナフ、その応用範囲は大きな可能性を持っています。
ケナフの主要産地である中国では全パルプの9割弱がケナフなどの非木材で占められています。
最近、国内においてケナフが注目され栽培されきている理由は、地球環境保全、特に森林の保護をめぐる国際的な世論同行の中で、木材繊維に代わる新しい非木材紙資源としての期待が高まってきたためです。またケナフは、炭酸ガスを多量に吸収するためCO2 濃度の高まりによる地球温暖化の防止にもつながると考えられています。
日本の紙の豊富さは、原料のほとんどを外国から輸入に依存してきました。特にこの10年間は、毎年の平均で日本の面積の半分にあたる1700万ヘクタールの森林が地球上から消失しました。インドやフィリピン等の熱帯林はほとんどが切り尽くされてしまいました。
新聞によく登場する「地球温暖化現象」の原因は世界各地の工業化・近代化による二酸化炭素、フロンの排出増加と、森林が減少したことが重なり深刻な状態になっています。砂漠化を防止し大気の浄化に役立つ森林を維持育成しながら世界中で栽培条件のあるところは森林が再生するまでの間ケナフのような環境優良植物を植えていくことがとても大切です。
米農務省は綿花の栽培で傷めてしまった土壌の塩害対策としてケナフによって生態系の母とも言える表土を回復させる研究に力を入れています。空気浄化・土地改良・資源化と地球温暖に総合的によい関わり方のできるケナフを植えることが注目されています。
<ただしケナフの安易な栽培に反対意見もあります>
安易なケナフの利用に,生態学研究者の間から疑問の声が上がっている.野外では一年草のケナフは年内に枯れ,速やかに生物分解される.学校教育やケナフ普及団体のイベントなどでケナフを紙漉きの材料に用いる場合は,靱皮部分だけが利用されるため,収穫後のケナフの約80%が焼却処分されている.当然のことながら,分解や焼却処分に限ってみると大気中に放出されるCO2量は吸収量と等しく,全体でも1年を通してみるとCO2の収支はゼロに近いことがわかる.すなわち,CO2の吸収効率がいくら高くても,ケナフはCO2削減にほとんど寄与していない.
また,ケナフの収量が在来植物より劣るという報告もある.調査によると,平均的なケナフの収量(4~5t/ha)はヨシなどの在来植物(10t/ha)よりも低く,一部のケナフ普及団体が推進するように在来の植生をはぎ取ってケナフを植裁してしまうと,“環境にやさしい”という言葉を借りた生態系破壊になりかねない.国内だけでなく,最近では,日本でのケナフ栽培はコストがかかるため,タイやマレーシアなどの熱帯地方に栽培をまかせてしまおうという傾向が出始めており,アジアにおける新たな環境破壊の温床となっている